2010-11-03

年下の人

『年下の人』(原題:LES ENFANTS DU SIECLE)
1999 / 138分 / フランス
監督:ディアーヌ・キュリス
キャスト:ジュリエット・ビノシュ、ブノワ・マジメル、ステファノ・ディオニジ、ヴィクトワール

19世紀活躍した小説家ジョルジュ・サンドと、詩人アルフレッド・ド・ミュッセの短く燃え尽した恋愛を描いた映画です。

まずサンドについて。
サンドの作品では「愛の妖精」がすごく好きです。
音楽家ショパンと愛人関係であったことでも知られています。
子供2人を育て、生涯多くの恋愛をし、作家としてすばらしい作品を多く残した、自立した女性です。
同じ女性としてとても魅力的で尊敬する人です。

ミュッセはわたしが卒論で扱う作家。
ユゴーと並ぶロマン派の詩人です。戯曲も手がけていて、わたしはこっちの方が好き。
彼はイケメンで放蕩者で、貴族趣味をもつ生粋のパリジャン。
利己的で寛容で、子供っぽくて知性的、情熱的で嫉妬深い。
そんなおとなこどもな性質は、現代のわたしたちと共感できると思います。

さて、『年下の人』の感想ですが、
歴史映画にしてはシリアスすぎずとてもドラマティックで、美しい映像に魅了されました。。。
物語は書籍や書簡に沿って丁寧に作られています。(まあでも所詮映画作品なのでフィクションですが)
映像も19世紀の色彩をリアルに再現しているとのこと。
(19世紀風俗研究者を加え本格的に挑んだようです。)
いちシーンいちシーンが絵画のように本当にきれいなんです。。。!

ほらこれなんか、印象派のどっかの画家の作品にありそうじゃない?
だって衣装を担当したのはあの有名デザイナー、クリスチャン・ラクロワ!
隅々まで美しいわけです。。。
音楽もリスト、シューベルトなどのロマン派の面々で飾っています。最高ですね。
あと友情出演で『ポネット』のあの可愛らしい女の子ヴィクトールが娘役で出てます!


内容について。

観終わってこの映画から受け取ったメッセージは、本当の愛することは、時間がたったあとから気づくということ。
それが、そのとき分かればいいのだけど、難しいんだよねぇ。
時間の経過により恋愛の思い出が美化(理想化)されていくからかもしれないけど、それ抜きにしても、です。
嫉妬心だったり、自尊心だったり、いろんなものが純粋な感情を曇らせてしまって、気づきにくくしてるのかもしれない。

対極な性格の二人だけど、だからこそ強く惹かれ、そして長く一緒にはいられなかったのでしょう。
破局の原因はミュッセのひどい嫉妬心ですが。。。
劇中では彼、ものすごい狂人さが際立ってました。
食事中腹が立ってお兄ちゃんの手をフォークでブッ刺す。
病人ほったらかして女遊びとカジノ。
情熱的な恋愛中でも「もう愛してない」「君が居なくて死にそうだ」と気紛れに豹変
雨の中アヘンやって浮浪者の様を子供に指差して笑われ幻覚見て建てつけ舞台登って10mの高さから落ち危篤状態になる
嫉妬心から狂いサンドの首絞める
、、、などなど。

サンドがミュッセに夢中になるまでは、好青年さながらの熱烈アプローチは好印象だったんだけどね。
恋愛って、気持ちが高揚するのは成就するまでで、あとは堕ちていくだけの傾向が多いよねぇ。。


ミュッセ演じるマジメル(Benoît Magimel)、
彫刻のような美しい顔立ちとスタイルで全女性を魅了します。。。
彼のかっこよさ、、ため息がでます。。ほぅ。。。
彼について調べてみたら『王は踊る』のルイ14世も演じてたんですね。気がつかなかった。


当ブログの名前はこの作品からとりました。
「LES ENFANTS DU SIECLE」は「世紀児」という意味で、本質的な意味は「神を信じない人々」です。
18世紀末から19世紀前半、ナポレオンの帝政から王制、共和制、はたまた君主制へと怒涛のように変わります。
(当時青春期の若者)青年たちは、欺瞞的な政治社会に希望を見いだせられなくなり、世紀病をわずらうのです。
で、就職超氷河期、どんどん膨れ上がる国債、将来の雲行き怪しい日本で生きるわたしたちにも共通すると思います。


邦題が「年下の人」となっていますが、これではサンド視点の映画のようで意味が違ってくるので気に入らないです。
原題はミュッセ寄りっぽいしな。
「ヴェネチアの恋人たち」じゃダメだったのかな。



追記:

英国のお騒がせアーティスト、ピート・ドハーティーをミュッセ役、ジェーン・バーキンの娘シャルロット・ゲンズブールをサンド役にして映画が撮られ始めたようです!

いつロードショーになるのかな。
イギリス版ミュッセとサンドの恋物語。
たのしみです。

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